雨の雫を受け、緑が美しい季節です。
目次
寄稿文 – 小原愛(一般社団法人Japan Innovation Network イノベーション加速支援グループ ディレクター)
白馬村プロポーザル採択のご報告 – 花井裕一郎
活動報告
編集部より
奥付
寄稿文
一般社団法人Japan Innovation Network イノベーション加速支援グループ
ディレクター 小原愛
「SDGs」という言葉にピンと来る方が多くなってきたと、この頃、感じる。昨年7月、ピコ太郎が“PPAP~♪”(ここでは、Public Private Action for SDGsの略だった)と国連本部で踊ったのが報道され、彼の金色の衣装に加え、色とりどりのロゴを見てSDGsを記憶されている方も多いのではないかと思う。
ピコ太郎×外務省(SDGs)~PPAP~ [YouTube]
SDGはSustainable Development Goalsの略で、日本語で言うと「持続可能な開発目標」となる。2015年9月の国連総会で採択された。地球を社会・環境・経済的に持続的にするために、先進国、途上国を含む世界中の全ての国が2030年までに達成すべき開発目標だ。色とりどりの原因は、その数にある。SDGsには17の目標があるので、ロゴは17色だ。
SDGs: Sustainable Development Goals
SDGsの素晴らしいところは、国連や政府など、市民から遠いところで達成が目指されるのではなく、全ての人々がみんなで達成を目指す目標だという点だ。SDGsの中身を決める過程にも、世界中の人々の意見が反映された。実に、世界170カ国から700万人を超える人々がインターネットや国連が開催した会議などで、どんな目標を入れるべきか意見を言った。
その結果、17個ものゴールになったわけだが、実は、さらにその下に“ターゲット”という小項目があり、その数は169にのぼる。これを見ていくことによって、世界中の企業やNGO、そして地域コミュニティや個人が、自分で達成できそうな目標が見えてくる。
日本カルチャーデザイン研究所(JCDLab)と関連が深い、SDGsの目標11「都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」を見てみよう。目標11の下のターゲットaには、「各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する」とある。これは、JCDLabが掲げる「豊かな文化・教育施設やまちづくりのために組織や制度の枠を越えて人々をつなぎ、ブリッジングする場」という事業理念と共鳴しないだろうか。
また、ターゲット7(ターゲットには、番号かアルファベットが振られている)には、「2030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する」というのがある。これは、JCDLabの「公共・民間文化施設、教育機関、都市空間デザインの基本・実施設計業務に関わる支援を行い(中略)地域の強みや独自性を発見しつつ、まちづくりの観点から設計者と綿密な計画を立て、その地域らしさを模索」という事業内容そのものではないだろうか?JCDLabが活動を進めることで、SDGsの達成にも寄与しているのだ。
さらに、SDGsの達成に興味を持たれたならば、政府が2016年12月に決定した、日本の「SDGs実施指針」を覗いてみることをお勧めする。この指針には、“あらゆる人々の活躍の推進”、“健康・長寿の達成”、“持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備”など日本の「8つの優先課題」ごとに、国内と国外でどのような施策を実施していくかが、明確に示されている。
例えば、ターゲット11.aに関連しては、「『対流促進型国土』の形成に向けて、また、人口減少や高齢化が進む中にあっても、地域の活力を維持するとともに、医療・福祉・ 商業等の生活サービス機能を確保し、高齢者等の住民が安心して暮らせる、持続可能な都市経営を実現」が国内施策としてあげられている。
少々難しい言葉で語られているが、この施策に沿って、JCDLabは具体的にどのような活動を進めることができるだろうか。
さらに、SDGsを通して、海外に目を向けてみることも可能だ。2017年以降、世界各国はSDGsの実施方針や進捗に関するレポートを国連に提出し始めている。以下のページをご覧頂くと、日本を含め各国のレポートを見ることができる。これらのレポートを見ると、自分が行っていることが、世界のどの国のSDGs推進とつながっているか、その国に対して実際に何かできることがあるのか、多くのヒントを見つけることができると思う。
Sustainable Development Knowledge Platform(United Nations)
このように、SDGsは“世界の共通言語”なのだ。政治の世界だけでなく、ビジネスでも、市民レベルの交流でも、SDGsは話題にのぼる。季節の挨拶の次に、“SDGs”かもしれない。私が勤める一般社団法人Japan Innovation Networkでは、2016年7月に国連開発計画(UNDP)と共同で、ビジネス、とくにオープンイノベーションでSDGs達成を目指す連携プラットフォーム「SDGs Holistic Innovation Platform (SDGs)」を立ち上げた。いま、600名近くの個人、そして70程の企業や団体にSHIPエコシステムに参加して頂いて、SDGsとビジネスの関係を探り、具体的にどのようなイノベーション、ビジネスモデルでSDGsを達成できるか、イノベーションの創出とビジネスモデルの構築を進めている。
SDGs Holistic Innovation Platform (SHIP)
その中でも、やはり、民間セクターが、地方の活力を活かし、公的セクターや市民と連携しながら、ビジネスを通じてどう持続可能なまちづくりを進めていけるかという議論が頻繁になされている。
2030年まで、気がつけば、あと12年だ。読者の皆さんも社会、世界とご自身のつながりを考えるきっかけとして、ぜひ、SDGsを覗いてみて頂いてはどうだろうか。
白馬村プロポーザル採択のご報告
花井裕一郎(一般社団法人日本カルチャーデザイン研究所 理事長)
この度、「白馬村図書館施設等基本構想策定業務 公募型プロポーザル」に採択されました。
私たちにとっての、初めての大きな仕事です。
6月19日に白馬村を訪れ、1日をかけて打ち合わせ、リサーチを行いました。
いよいよ、図書館及び複合施設の基本構想に向けてのプロジェクトスタートです。
「本がある」空間を中心にした複合施設を考えます。
これから、有識者会議、村民とのワークショップなど、多様な意見を聞き、まとめ、
ステキな空間を創造します。
活動報告
2018年06月11日
2018年05月26日
機関誌『Cul De La』を創刊しました
その他の活動報告はこちらをご覧ください → http://jcdlab.com/news/
編集部より
弊社団の機関誌『Cul De La』、また、本メールマガジン(Cul De La通信)の名前は、
私たちを潤す知の恵みを、山になぞらえて名付けました。
その私たちの最初のプロジェクトが、北アルプスにいだかれた白馬村であることが嬉しいです。
厳しい山の中で生き延び、暮らすための知恵は、書物から学べる部分はその「裾野」にすぎず、真価は、現場での経験や技術の蓄積にあるといえるかもしれません。
しかし、そのような知恵であるからこそ、山には知を「人と共有する」習慣が根づいています。
「こんにちは」「もうすぐ頂上ですよ」と交わされる登山者のあいさつひとつにも、その姿勢が表れています。
白馬村には、世界中のツーリスト、アルピニストが集まります。ここにできる知の拠点は、どのような姿になるでしょうか。
知を携えた人と、知を分け合う文化に支えられた、すばらしい場になると確信しています。
プロジェクトの進捗は、また引き続きお知らせしてまいります。楽しみにお待ちください。
編集部 高城 光
奥付
Cul De La 通信
2018年6月25日発行 通巻第2号(再配信)