Cul De La 通信 第4号

厳しい暑さは続いていますが、
朝夕は木立の影が長く伸び、秋の気配を感じます。

 


目次

寄稿文「図書館のイノベーションを推進できる人材の育成について」

– 朴世晋(株式会社早稲田大学アカデミックソリューション(WAS))

白馬村プロジェクトの進捗ご報告

– 花井裕一郎

活動報告

図書館総合展でフォーラム開催!

編集部より

奥付

 


寄稿文

「図書館のイノベーションを推進できる人材の育成について」

株式会社早稲田大学アカデミックソリューション(WAS) 朴世晋

いま、公共図書館のあり方について問い直されようとしている。前例のない社会的課題の出現、テクノロジーの進化、予算の削減など公共図書館を取り巻く環境の変化が著しい。

こうしたなか、文部科学省から出された報告書等でも一部触れられているとおり、未来の図書館のあり方のひとつとして、「読書支援」から「社会課題の解決支援」に役割をシフトさせ、レファレンス機能などの従来の強みと新たな知を融合することでサービスのあり方を変革し、社会への貢献が持続的に可能な経営モデルを構築することが求められてくるであろう。公的な機関として変化と競争の少ない環境におかれてきた図書館にも、こうしたイノベーションを推し進めることのできる人材の育成が必要になりつつあると考える。

図書館スタッフは地方自治体から与えられた方針のもとでオペレーショナルな仕事を担うことが多く、そうしたスタッフがリーダーシップを取って図書館の変革を実現することは難しいのでは、とのお考えを示される方は少なからずいらっしゃる。しかし、図書館と同じ非営利の組織である大学の職員人材育成に取り組んできたWASの経験を踏まえれば、イノベーションをリードできる図書館スタッフの育成は十分に可能ではないか。

大学も18歳人口の減少や社会ニーズの高まり、補助金の削減など近年の環境変化により、教育・研究・経営のあり方について変革が求められており、こうしたイノベーションをリードできる人材の育成が喫緊の課題となっている。

大学は民間企業とは違い、利潤に関連した明確な達成指標を持ちにくい非営利の組織であり、社会を良くするために「我々の信じる価値」を実現できるかどうかが、組織と構成員を突き動かす力の源泉となっている。

大学において「我々の信じる価値」の拠りどころとなるのが「建学の精神」であるが、その制定から時が経つにつれて、想起できる具体的なイメージが薄れたり、当初込められた意味合いや意義が見失われたりしてしまうケースがある。その結果、組織の力の源泉としての機能が弱まり、構成員の能力向上に関する動機も生まれにくくなってしまうことが指摘されている。

したがってWASでは、大学職員人材育成のファーストステップとして「我々の信じる価値」を具体的で「ありあり」としたビジョンとして、構成員全員で共創し腑に落としていくプロセスを踏むことにこだわっている。そうすることで構成員を突き動かす力も高まり、人材育成に対する内発的な動機もおのずと醸成されると考えている。

図書館における人材の育成にも、大学職員の人材育成と同じ考え方が適用できるのではないか。

図書館スタッフの方々とお話をすると、図書館や自身の果たすべき使命を自分なりに定義し、利用者、蔵書、建屋、仲間などに対する矜持を具体的にもっていることに心を打たれる機会が多くある。こうした使命や矜持は、非営利組織の「我々の信じる価値」に通じるものであるとともに、図書館を変革に突き動かしていくために不可欠な無形の財産でもあり、また、図書館運営に携わるスタッフ以外の人間には持ちにくい固有のものであろう。

人材育成を支援するWASとして、図書館スタッフが「我々の信じる価値」を内省し共創することを手助けできれば、組織が自律的に変革していくために必要な風土やマインドセットを醸成できるのではないかと思っている。ひいては、こうした風土やマインドが、図書館スタッフの経営感覚やイノベーション実現に向けたリーダーシップを自ずと高めていく基盤になりうるのではないかと期待している。

WASではこうした考え方のもと図書館のイノベーションをリードできる人材育成プログラムを提供できないかどうか、日本カルチャーデザイン研究所の先生方のご意見を賜りながら模索しているところである。本メールマガジンをご覧いただいて少しでもご関心をお持ちの方に、ぜひご意見やご助力を賜れれば幸いである。

参考リンク

早稲田大学アカデミックソリューション | Waseda University Academic Solutions Corporation Website

 


白馬村プロジェクトの進捗ご報告

7月21日~26日に開催された、「NAGANO国際音楽祭 in白馬」にて、

村民の皆様にアンケートを実施しました。

新しい複合施設が担う役割、期待する機能、村の魅力など…

そして、280あまりのご回答をいただきました。

今、内容を集計しています。

社団のメンバーは、8月29日に白馬村役場と打ち合わせ。

8月30日には、有識者会議も予定されています。

アンケートの内容もこの会議で話し合う予定です。

有識者会議は、傍聴も受け付けています。

どんな2日間になるか、楽しみです。

花井裕一郎(一般社団法人日本カルチャーデザイン研究所 理事長)

 


活動報告

2018年08月22日

白馬村の複合施設に関する有識者会議の傍聴を受け付けています

図書館総合展 フォーラム「資金がない?あきらめるな!図書館建設に必要なお金は目の前にある。」開催のお知らせ

 


図書館総合展でフォーラム開催!

図書館業界最大の展示会「図書館総合展」が10月30日~11月1日、バシフィコ横浜で開催されます。

私たちJCDLabは、これまでの資金調達支援の経験を生かし、フォーラムを開催いたします!

ファシリテーターとして、糸賀雅児(慶應義塾大学名誉教授)氏をお迎えします。

資金調達に成功した図書館や、省庁のご担当の方々をお招きし、具体的な事例や助言をご紹介いたします。

現在、このフォーラムを充実したものにするために、打ち合わせを重ねているところです。(8月24日にも、ミーティングを行いました。)

他では得られない情報を皆さんとシェアしながら、鋭く、わかりやすく、資金調達について学ぶ場をつくりたいと思います。

どうぞ、ご参加ください!

詳細はこちら

資金がない?あきらめるな!図書館建設に必要なお金は目の前にある。 | 図書館総合展

 


その他の活動報告はこちらをご覧ください → http://jcdlab.com/news/

 


編集部より

白馬村のプロジェクトが、いよいよ本格的に動き始めました。

白馬村では、すでに昨年度から、図書館施設のあり方について、検討が始まっていました。その議事録(webで公開されています)を、先日読み返しました。

本を貸し出すというだけではない、地域の問題解決役としての図書館への期待が、住民のみなさんの中にあることが感じられました。

図書館が「無料貸本屋」でないことは、今や一般的な認識になりつつあります。そんな中、図書館設立に関わる私たちは、潜在的な利用者も含む、様々な関係者の価値観をくみ取り、立場とスキルを活かして「具現化」する役割を担わなくてはなりません。

また、これまでの白馬村図書館へのまなざしも忘れてはなりません。

図書館の立ち上げは、創造的でドラマチックですが、同時に、イノベーションは始まった後が肝要であり、「志」を維持できるかどうかに、図書館の成熟がかかっているといってもよいでしょう。

大学における「建学の精神」のような、精神的な基礎と、そのビジョンを「具現化し続ける」人の地道な育成が必要です。

ダイナミックに、堅実に。その歩みが始まっています。

編集部 高城 光

 


奥付

Cul De La 通信

2018年8月27日発行 通巻第4号

発行 一般社団法人日本カルチャーデザイン研究所

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