Cul De La 通信 第3号

あまりの暑さに、夕立を恋しく思います。

 


目次 

寄稿文「図書館の可能性を広げるために」
 – 高野洋平(建築家/高野洋平+森田祥子|MARU。architecture共同主宰)

白馬村プロジェクトの進捗ご報告

活動報告

編集部より

奥付

 


寄稿文

図書館の可能性を広げるために
高野洋平(建築家/高野洋平+森田祥子|MARU。architecture共同主宰)

図書館を思い浮かべる時に、そのイメージはきっと人それぞれで興味深い。
ある人は、整然と並んだ沢山の本棚を思い浮かべるかもしれない。ある人は、学生時代に受験勉強をした記憶を思い浮かべるかもしれない。ある人は、自分が通った閲覧席の窓の外の景色を思い浮かべるかもしれない。ある人は、カウンターに座った馴染みの司書さんの顔を思い浮かべるかもしれない。

図書館の設計をする時にいつも考えることは、そこに生まれる個人的な「場所」のことだ。全国の沢山の図書館の中には、それぞれ沢山の場所があるが、これからつくる図書館は、そこにしかない場所を更に豊かで魅力的なものにしたい。

図書館は、整理された情報を誰もが探しやすいことが必要である。つまり、あるシステムを持った空間であることが求められる。このシステムをどのように捉えるかが、設計の中では重要になってくる。放っておくと客観的にわかりやすいシステムの達成が最も重要になってしまい、個人的な感覚に訴える「場所」の豊かさが損なわれることにもなってしまうからだ。

個とシステムを巡る葛藤。このことは、図書館だけではなく、様々な場面で起こっていることでもある。沢山の人が生きていく社会の中では整然としたシステムが必要だけれど、一方で、世の中は矛盾に満ちた、一人一人の集合でもあるのだ。システムが強い時代だからこそ、個人性や場所性の持つ可能性をもっと考えてみたい。

これからの図書館を考える時には、全体のシステムも、場所の個性も、対立するものではなく、同時に考えていきたい。例えば、図書館毎の個性を活かした「テーマ配架」や、そのまちの特徴を活かした「まちじゅう図書館」のような、それぞれの場所を豊かにする、魅力的な仕組みとしての新しいシステムを生み出したい。そのためには、システムことを、既に決まったものとして考えるのではなく、関係者で一から議論をしていくことが大切なのではないかと思う。これまでの常識を一旦はずして、その街ならではの特徴を考えていくことで、図書館の可能性は飛躍的に広がるはずだ。

参考リンク

建築設計事務所(東京・名古屋) 高野洋平+森田祥子 MARU。architecture

 


白馬村プロジェクトの進捗ご報告

白馬村プロジェクト、進行中です。
本日も、花井理事長らメンバーが、NAGANO国際音楽祭 in白馬に合わせて白馬村入りしています。
近々有識者会議も予定されています。
村民の皆様のワークショップに向けた情報収集も…。
皆様にご報告できるのが楽しみです。

NAGANO国際音楽祭

 


活動報告

2018年07月06日
坂田理事が政策研究大学院大学でミニ講義を行いました

その他の活動報告はこちらをご覧ください → http://jcdlab.com/news/

 


編集部より

公共図書館で個人が知的な活動をのびのびと行うためには、資料だけではなく、環境や、自分自身の心の状態も整っていなければなりません。こうした条件は、私たちの極めて個人的な感覚によるものです。

例えば必ずしも、「閲覧席」が資料を読むのに適しているとは限らず、ある人にとっては、本棚の間の通路や、図書館の外の喫茶店が、知的活動の場だということもあるでしょう。

さあ、これからやるぞ、というときに公的に用意された閲覧席やワークスペースをいったん抜きにして、あなたが本当に行くべき場所は、どこなのでしょうか?

ある図書館において、自分の知的欲求が満たされる環境を発見し、そこに至るまでの道のりやふるまいを身につけるとき、公共図書館は「私の」場所になるのではないでしょうか。

猛暑が続いています。皆様ご自愛ください。

編集部 高城 光

 


奥付

Cul De La 通信
2018年7月25日発行 通巻第3号

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