Cul De La 通信 第8号

今年も残りわずかとなりました。
仕事納めまであと一息という方も、休暇モードの方も、
体調を崩されないようご自愛ください。


目次

    寄稿文「帰りたくなる場所-まちの公共施設に『ある』ものとは―」
    – 大場黎亜(株式会社GPMOグローカル研究事業部プロジェクトマネージャー/宮城県南三陸町復興応援大使)

    白馬村プロジェクトの進捗ご報告
    – 花井裕一郎(一般社団法人 日本カルチャーデザイン研究所 理事長)

    活動報告

    機関誌第2号、製作中です

    年末のご挨拶

    編集部より

    奥付


寄稿文

「帰りたくなる場所-まちの公共施設に「ある」ものとは―」
大場黎亜(株式会社GPMOグローカル研究事業部プロジェクトマネージャー/宮城県南三陸町復興応援大使)

11月3日、文化の日。高校卒業以来、私には、毎年この日に帰る場所がある。母校で、
プロの指揮者やソリストを招き、生徒、卒業生、父母の総勢300名以上で、ベートーヴェンの交響曲第九番を合唱する「第九の会」である。高校時代に、この会のリーダーを務めて以来、私にとっての「第九」、私にとっての「このホール」、私にとっての「この日」がかけがえのないものになった。今年も社会人になった後輩が、なんとか都合をつけて駆け付けた。

制服も校風も、色々と在学時から変化していき、どこか寂しく、どこか遠ざかっていく母校への想いに、今年はもう出ないと思っていた彼女が、「先輩、やっぱり第九は良いですね」と、呟いたのが印象的だった。時と共に思い出が遠ざかり、面影が薄れていっても、私には私の、彼女には彼女の「第九」がある。私たちはその「第九」に、自分を見つめに、あるいは、自分を探しに、帰ってくるのである。

  私のまちづくりの原点は、東日本大震災だ。大学3年を目前にした、春休みに起きたあの出来事を機に、私は被災地へ足を運ぶようになった。教育に携わる道を志していた私は、地域に入り、地域の人々に触れ、地域を好きになればなるほどに、このまちの子どもたち、いや、子どもたちに限らず、このまちに生きる人々に必要な「場所」とは何なのかと、自分の中で模索するようになった。私がまちづくりの仕事に就いたのは、これがきっかけだ。

私のそんな問いにヒントをくれたのが、日本カルチャーデザイン研究所(以下JCDLab)理事長である花井氏の「ないのに、ある」という言葉だった。何もかも無くなってしまったようなこのまちにも、見えない歴史、文化、記憶、エネルギーが、ある。復興の中で目指すものは、元の姿がなくても「ある」まちづくりなのだと思った。そして同時に、「あるのに、ない」を作りたくはないと、強く思ったのである。

10月30日から11月1日に開催された「全国図書館総合展」において、JCDLabが主催した「図書館政策フォーラム—図書館建設のための財源調達法」は、タイトルのテーマに沿ってはいるものの、手法についての議論に留まらず、もっと図書館の本質を探るような会であったと感じている。もちろん、国の方針や補助金等の交付金について、その交付金を利用して事業を実現させた先進事例について、そして、そのようにして建った施設で運営をされている中でのお話について、それぞれのゲストの方から、丁寧かつ面白いお話がたくさんあった。しかし、大事だと思ったのは、お話しいただいた各自治体の事例において、「私たちのまちにとっての図書館」とは何なのかをよく考え、地域で創り上げていくプロセスを大事にしている様子である。良いことも悪いことも、そのストーリーはそれぞれの物語として、人の、まちの記憶に繋がっていく。「ないのに、ある」がある限り、私たちはその「ある」に惹きつけられて繋がることができる。私たちの仕事は、「ないのに、ある」を見出して紡いでいくことなのではないかと考える。先日のフォーラムでは、各自治体の取り組みが、そのまちに関わる子どもから大人まで、あるいは、そのまちに縁ができたいつかの訪ね人が、帰ることのできるような場所を作っているように思えた。自分たちのまちに、「ある」が見えているからこそできる取り組みなのではないかと思った。

「私にとっての第九」は、「私にとっての図書館」、「私にとっての学校」ともなり得る。ホール、図書館、学校、公民館・・・私たちが仕事で関わるどの施設においても、そこで得た体験が記憶となり、愛着に繋がることが、結果として、個やまちに愛される「帰るべき場所」となり得る。私には私の、皆さんには皆さんのまちづくりがある。しかし、まちづくりは、一人ではできない。自分たちの目と肌と心で感じた「ある」を信じながら、1つ1つの音を集めて一つの曲を奏でるように、「帰りたくなる場所」を築いていくことが、それぞれの想いを一つのまちづくりに繋げ、世の中をより良くしていくことだと思っている。私たちの仕事は、そういう仕事であると思っている。

参考リンク

株式会社GPMO 公式ホームページ


白馬村プロジェクトの進捗ご報告

白馬村でのワークショップを終え、基本構想の今年度中の完成を目指して進行中です。また続報をおしらせします!

花井裕一郎(一般社団法人 日本カルチャーデザイン研究所 理事長)


機関誌第2号、製作中です

弊社団の機関誌『Cul De La』は、来年4月に発行予定です!
11月26日に第2回編集会議を行い、思わず「おお!」と声のあがるような企画が採用されました!
12月13日、14日には、社団一同、岩手県紫波町の「紫波町図書館(オガール紫波内)」と、福島県須賀川市でオープン間近の「須賀川市市民交流センター(愛称 tette)」を視察しました。

それと同時に、紫波町図書館 主任司書の手塚美希さん、くまもと新都心プラザ図書館館長の河瀬裕子さんをお招きして、お二人の地域での働きを取材させていただきました。

1月にも取材を控え、また、文章をお寄せいただく方々へのご依頼も行い、編集委員会一同、第2号を作り上げる道のりを楽しんでいます。


年末のご挨拶

今年も残すところ数日となりました。

本メールマガジンをお読みいただいている皆様におかれましては、大変お世話になりました。
弊社団の2018年は、結団してまもない社団の体裁を整えあげることから始まりました。
それと同時に、図書館総合展の企画プロジェクトが立ち上がり、年の真ん中の6月、
白馬村の図書館基本構想策定に弊社団が選定されました。
この白馬村のプロジェクトをもって、弊社団の本格的な活動にやっとエンジンがかかったといえます。

その後は、白馬村でのワークショップ、図書館総合展のフォーラム主催など、
熱い志と推進力を糧に、活動を進めてまいりました。

思い返せば、私たちの活動は常に、社団の外の方々とのつながりに支えられています。
弊社団の活動理念の通り、私たちの仕事は、図書館、文化施設に関わる方々を「ブリッジング」していくことです。
橋をかける岸辺がなくては、社団の実体もないのです。

この一年、弊社団の活動の礎となってくださった皆様方に、心よりの感謝を申し上げます。
最後になりましたが、新しい一年の皆様の益々のご健勝を祈念いたしまして、年末のご挨拶とさせていただきます。よいお年をお過ごしください。

一般社団法人 日本カルチャーデザイン研究所 一同


2018年12月27日
紫波図書館(オガール紫波)、須賀川市市民交流センター「tette」の視察を行いました

その他の活動報告はこちらをご覧ください → http://jcdlab.com/news/


編集部より

機関誌『Cul De La』の企画として、紫波町図書館での対談の司会をさせていただきました。

図書館のあるべき姿を目指し、それを実行するエネルギーのあふれる姿に圧倒される、感動(と緊張)の数時間でした。

途中のトラブルにも関わらず、至らない点もあたたかく受け入れ、図書館の豊かなあり方の理想にせまるお話を聞かせてくださったお二人に、心より感謝いたします。

お二人の言葉からは、心の底に根ざした信念と、まだここにない理想の図書館へのビジョンが感じられました。

今回の対談記事で、その核心を多少なりとも感じていただければよいのですが、お話を伺いながら、まだまだ窺い知れない深い本質があると感じました。

私自身も、聞き手としての腕をあげて、お二人の元に再訪したいです。

最後になりましたが、2018年、社団の活動を支えてくださったみなさま方に、深い感謝を捧げます。

みなさまの元に、豊かな新年が訪れますよう、お祈り申し上げます。

編集部 高城 光


Cul De La 通信
2018年12月28日発行 通巻第8号
発行 一般社団法人日本カルチャーデザイン研究所

 

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